Dr.コラム

2008年7月 コラム(2)

大頭 信義

 涼しさや 鐘をはなるる かねの声
与謝 蕪村 (江戸中期)

こんにちは、 お元気でお過ごしのことと拝察申し上げます。 

冬の野山をわたっていく鐘の音に寒さをつのらせる場面があり、そしてこの句のように、「涼しさ」を送り込んでくれる鐘の声のシーンも確かに経験いたしますね。

「鐘の声」は古来より、内外の文学でよく採り上げられて参りました。

 祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 
 娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらはす。
 平家物語

 三ヶ月の東は暗く鐘の声 芭蕉

 月落鳥啼霜満天 江楓漁火対愁眠
 姑蘇城外寒山寺 夜半鐘声至客船 「楓橋夜泊」
 張継



「銘の神護寺」、「姿(形)の平等院」、「音(声)の三井寺(園城寺)」、 
「日本三大名鐘」



写真は 平等院の鐘




 さて、冒頭の蕪村の句からは何を感じられますか。梵鐘が細かく動いて、その内外の空気が「殷々」と振動して、それが空気の波となって私の立っている方向へ流れてくる。やがて、ゆっくりとした共鳴現象を私の耳の中の鼓膜に引き起こす。  時には、その振動を全身の皮膚への刺激として感じる。私はふと、行動止めてその波動現象を「心地よい」ととらえる。そんなところに「涼しさ」感じとったと意識するのでしょうか。  このような素朴な「物理現象」をもっと体験したい。