Dr.コラム

2010年1月 コラム(8)
大頭 信義

 わらんべの 溺るるばかり 初湯かな
飯田 蛇笏(いいだだこつ) 昭6

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 いずれのお宅でも、赤ん坊の誕生は大きな喜びをもたらします。我が家でも2年前の年の暮れに女児が生まれまして、こんな想いを味わうことができました。ふたとせを経て、幸いにも元気に成長し、また幸運なことに我が家から数百mのところに住んでいてくれるものですから、週のうち2日ほどは夕食を一緒にと訪れます。

 「じいじ、見てみて」と、その日買ってもらった人形を抱きしめて駆けてきます。段ボール箱に入って、「ぎっこん、ぎっこん」と箱を揺すります。 ひもを結んでやって渡すと、電車の運転手をやって「きゃっきゃ」と走ります。その動作のひとつひとつや、帽子をかぶって駆け回る姿に見とれます。

死の側より 照明(てら)せばことにかがやきて
ひたくれなゐの 生ならずやも
斉藤 史 (さいとうふみ) 昭52

 そして数十年を経て老荘を迎え、どのような場面に感動を覚え、自分の周りを照らすことができるのでしょうか。
 この1首、斉藤さんは明治42年生まれの歌人のようですが、「死の側より照明せば」、生に異様な真紅の輝きがあると述懐しています。
 ふむ、そんなことになるのだろうか。日々に死の間近にたたずむ方々と時間をともにしながら、またこの一年、思案して見ます。

2010年 新たな年初に 大頭 信義