Dr.コラム

2010年4月 コラム(9)
大頭 信義

湧きいづる 泉の水の盛り上がり
くづるとすれや なほ盛り上がる
窪田 空穂 (大正7)

 こんこんと湧き続ける泉を、さていつの日にゆっくりと向かい合って眺めたことであったろうか。
19才の頃、初めての富士登山を学寮の同室の先輩と試みて、麓からよじ登っていったことがある。9合目でへとへとになって、高山病のため朦朧としながらやっと頂上にたどり着いた。
でも、すぐ回復して、帰りの須走をほんに100m、4,5秒の猛スピードで駆け下りてみると、靴のエッジがめくりかえって靴下がのぞいていた。
 そんな全身砂まみれの折りに、地元の川で盛り上がる源泉をみた想い出がある。

 そして、また遙か後に、ヨーロッパの片田舎の村の広場の中心で、こんこんと盛り上がる泉水に見とれたことがある。古い石作りの苔むした泉である。やはり何世紀も続いてきた湧き水であった。

 ひとの熱情は、いつ枯渇を迎えるのか。身体的な悪条件の出来をどうやって乗り切っていくことになるのだろうか。

 「鬼の土門」と称された写真家・土門拳(1990年没)は、「筑豊のこどもたち」、
「室生寺」、「日本名匠伝」など著名な写真集を残したが、「古寺巡礼」の撮影を始めた時には半身不随となり、2度目の脳出血では車椅子生活を送りながらも、弟子に指示しながら精力的に撮影を行った。実地では、三脚にカメラを据えて、弟子にピントその他を調整させた後に、シャッターは自分のあごで押したという。  むむむ・・

   「花みずき」90号をお届けいたします。今号では、認知症に対してのクリニックでの工夫を集めてみました。 グループホームへ入居している方のご家族も想いを寄せてくださいました。  どうか一読頂ければ幸甚と存じます。

2010. 4 大頭 信義