機関誌「花みずき」

睡眠 曼茶羅

院長 大頭 信義

誰にも関心が深い睡眠
  通常のヒトは睡眠不足の時の不快感をよく知っているだろう。頭がぼんやりしていて重く、時に頭痛まで出現し、足下はふらつくことさえ起きる。
一方、ぐっすりと熟睡出来た後の爽快感は格別だ。 昼間の作業も実に順調にことが運ぶ。いつもこんなに爽やかな気持ちで過ごせたら、どんなに素晴らしいことだろう。 

睡眠について、判ってきた
 長い間、睡眠は単に脳がくたびれて休憩するのだろう、くらいにしか考えられていなかったが、近年になってさまざまな知見が得られてきた。
この「睡眠」に関しての研究で業績がめざましいのは、いずれも米国の研究所であるが、ひとつは、スタンフォード大学の生体リズム研究所であり、もうひとつは、カリフォルニア大学バークレー校が目覚ましいようである。 

睡眠時間は、次第に短くなっている
残念なことに、社会の進歩とともに、睡眠時間は短くなっている。世界保健機構(WHO)が、「睡眠不足は先進国の流行病だ」と宣言を出したほどである。睡眠はつい最近まで、生物学の最後に残った大いなる謎だった。睡眠は、食欲、性欲と並ぶ人間の最も基本的な欲求であったにもかかわらず、よく判っていなかったようだ。すぐ誰にも想いつくことは、歴史において、優れた資質をもった種族が生き残ってきたと言えるのだから、むしろ人間は、眠らなくてもよい方向へ進化してもよかったのではないか?しかしながら睡眠は、短くはなりながらも、しぶとく生き残ってきたようだ。

レム睡眠とノンレム睡眠
 睡眠の役割を理解するには、どうしても、レム睡眠とノンレム睡眠の違いを知る必要があるようだ。
1952年に、シカゴ大学から、重大な研究結果が発表された。昼夜にわたって赤ちゃんの眼球運動を観察した結果、寝ている時に、眼球が激しく動くときがあることを発見した。それと同時に、脳波の動きも目立って活発になるというのだった。目覚めているときの脳波とほぼ同じだというのである。その前後には眼球が動かない長い睡眠があった。この静かな睡眠の間は、脳波の活動も穏やかである。この眼球運動が起こる睡眠と起こらない睡眠は、どうやら寝ている間に、何度も繰り返されているようだ。発見者は、それぞれの状態を、レム睡眠、ノンレム睡眠と名付けた。
 レムとは、“rapid eye movement”(素早い眼球の動き)の頭文字をとったものである。脳が起きている時とほぼ同じ活動をするレム睡眠の間に、ヒトは夢をみているのだと判った。

1  レム睡眠の特徴
 レム睡眠中の脳は、起きている間に得た大量の情報から必要なものと不要なものを眠りながら整理し、必要な記憶の定着や記憶を引き出すための索引作りを行っていることが近年の研究で明らかになっている。つまり、昼間に体験した出来事や学習によって得た知識などの大切な情報を、レム睡眠中に整理しながら記憶として脳に焼き付けているのである。レム睡眠中は脳内で大量の情報を処理しているため、反射的に体が動かないように全身の筋肉は弛緩状態(体が動かない状態)になり、外からこの体を持ち上げると、グンニャリとして手足は垂れ下がる。またレム睡眠中は交感神経の活動が活発になるため心拍数や呼吸数が不規則に変化する点も特徴として挙げられる。

2  ノンレム睡眠の特徴
 ノンレム睡眠は①~④の4つの段階に分かれ、④がもっとも深い眠りになり、揺り起こそうとしてもなかなか目覚めない。 
下の図を見てみよう。上の薄いブルーがレム睡眠を表しているが、次第にこの部分が増えてレム睡眠の割合が多くなっていくのが判る。この周期はおよそ1時間半位のようだが、最初はいきなりノンレム睡眠に入って、周期の終わり頃にレム睡眠となる様子がわかる。
つまり、夢を見るのは、脳がよく働いているレム睡眠の時間帯なので、目が覚める頃に激しく夢をみるという自分の経験ともよく合っている。

レム睡眠とノンレム睡眠