だいとう循環器クリニック

花みずき


これから変わる「傷の治し方」

院長 大頭 信義


◇ 大きな転換だ
 「傷の治し方」に大きな変化が起きています。
今までの常識を根底から覆すような大きな転換です。
 これまでとは違って、傷をきれいに治すには、「消毒しない、乾燥させない」という方法が遙かに良いという考え方が現れ、この方法を採用する医療機関が増え始めています。
 私たちも、実際に経験してみて、その違いの大きさに驚いています。

◇ これまでの方法では
 
たとえば、膝や肘をすりむいた場合、普通は何か薬剤で消毒して、それがごく浅い傷で、乾燥している時には、そのままにして治るのを待つ、少し深くてこれからじくじくしてくるような場合には、消毒のあとにガーゼを当てて乾燥させながら清潔に保つというのが、古来実行されてきた伝統的な傷の治療法でした。
@ 消毒する
A 乾燥させる
というのが、2つの大きな鉄則でした。

 傷を治すという方式は、ロ−マ時代からも、植物や動物あるいは自然界に見つけた物質を様々に工夫して試行錯誤を繰り返してきたようです。そして、19世紀になって、パスツールによる「腐敗と細菌の関係」の発見や、コッホによる「病原菌と病気の関係」の発見などが相次いだことから、科学的な創感染の予防策を提唱したリスター(Lister)は、医学雑誌Lancetに「石炭酸に浸したリント布で傷を覆うと傷が化膿しない」と発表。時に1867年のことです。
 そしてこの頃から「消毒薬と何かの油類」による材料が次々開発されるようになり、「創傷被覆と乾燥状態の維持」が創傷管理の二大コンセプトとなりました。これは20世紀後半まで唯一の方法として信じられることになりました。

 長野県松本市、相澤病院の夏井 睦(なつい まこと)医師はインタ−ネットや講演で「新しい創傷治療」を強く推進してこられましたが、この間の事情について次のように述べておられます。

 創傷治療という点で、最もエポックメイキングであったリスターの治療法(リスター主義と呼ばれた)を今日的な創傷治療の面から見直すと、その基本理念は「創傷管理=感染予防」だろうと思う。つまり、感染さえ抑えられたら傷は治癒するというものだ。
 当時、ちょっと深い傷は必ず感染していたわけで、そのための敗血症による死亡率も極めて高かったことを考えると、当然の発想だろう。従ってリスターは、「創面にいる細菌を除去し」「外から入り込む細菌を防ぎ」「創面にいる細菌が増えないように乾燥させる」ことを目的に、上記の治療法を考案した。
彼の示した圧倒的な治療効果は彼の考えを批判する勢力を次第に駆逐し、リスター主義を厳密に行うことが一流の臨床医の証とされるようになった。このリスターの方法、すなわち「傷は消毒して乾かさないと治らない」という考えが19世紀後半から一般に普及し、それが21世紀の今日まで続いているわけである。

◇ 「湿潤療法」を、具体的に                                 
1) 消毒液で、消毒しない。消毒は、組織の治癒力を失活してしまう。
2) ていねいに水洗いをする。これは、水道水でよい。水を霧吹きなどに入れて強く拭きかけるのも良い。砂や泥で汚れた傷は、ブラシでこすり落とす。
  このとき、場合によっては局所麻酔をして痛みをとってからこする必要もあるでしょう。
3) そのあとは、湿潤な状態を保つ。湿潤に保てるのであれば、その手段は何だっていい。
  市販の被覆材を使ってもいいし、台所にある食品包装用ラップでもいい。
  ガーゼの表面にフィルムを貼付してツルツルにし、それで創を覆ってもよい。
  ガーゼの替わりに紙おむつを選んでその表面にフィルムを貼付すれば、浸出液が多い創に非常に有用だ。
  浸出液が多くて創周囲の皮膚にアセモができる場合、台所用の「穴あきポリ袋」がとてもよい。
  これで創を覆い、その上に紙おむつを当てれば完璧である。
4) 密封はどちらでも良い。創を密封しなければ創面が湿潤に保たれないのであれば密封するし、密封しなくても湿潤に保てるのであれば密封は不要だ。
5) 口唇のように被覆材が張れない場合は、口内炎用の軟膏を頻回に塗布すればいい。
  頭皮挫創には、ワセリンなどの軟膏を塗布すればよい。 
6) 市販の被覆材が随分増えてきました。普通の薬屋さん、ドラッグストアで購入できます。
  具体的な商品名は、あとの看護師・藤城の投稿を見て下さい。
7) 一般向けの解説冊子が、「正しいキズケア推進委員会」
  (電話:03-3486-0845)で入手できます。

その他、知りたいことは、クリニックへご連絡して下さい。


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